今はもう昔のことですが、元々私は8年間、中規模の人材紹介会社の勤務経験があり、求人広告や人材派遣についてはそこそこ詳しいと自負しています。
しかし、そんな私でも謎だったのが、インターネットの求人広告を請け負ってくれる会社です。
営業マンよりも成績の良い会社(がいくつかあり、年間で数億円の売り上げを会社にもたらしてくれたりします。
やりとりはメールが中心で、顔を合わせることもなく、不思議な感じがしていました。
今回、たまたま友人と飲みに行った際、知り合いにインターネットの求人広告の会社を立ち上げた奴がいると言うので、一度会って話をしてみたいと思ったわけです。
友人の紹介でインタネット広告業者のKさんと2019年の12月のクリスマス前に秋葉原駅で会う約束をしました。
約束の日、秋葉原駅前でKさんを待っていると、見た感じ30〜40代で中肉中背の優しそうな普通のおじさんが近づいてきました。
事務所は何と秋葉原駅前のUDXビル内にあるというのでオフィス棟の方に歩いていくと、実はそうではなく、ベンチャー企業が集まるキャラリーの方にあると言うのです。
エスカレーターを上ると、その先に交流サロンがあります。
交流サロンに入るには認証カードが必要です。
さらに交流サロンを通り抜けるとまた認証カードをかざして、細かく部屋を区切ったオフィスに入って行きます。
そのたくさんの部屋の中の一つが、事務所になっていました。
広さは10平米もない感じですが、普段は2人だけなので、ちょうど良い広さのようです。
10分くらい雑談をして、いよいよ本題、Kさんに様々な質問をしました。
私「ぶっちゃけ今の時代、インターネットの求人広告って儲かるんですか?」
Kさん「いいえ、そんなことないです。今はライバル(サイト)が多いので、5年前に比べるとかなり難しくなっています。最近は特に大手のサイトがさらに強くなっているので、私たちのような中小の企業は苦戦を強いられている状況です。」
(正直なところ、5年前の状況を知っている私は、「いやー儲かって仕方ないですよ」みたいな答えを予測していたので、カウンターパンチを喰らった気分でした。)
私「え、本当ですか?それならなぜ転職の求人サイトを作っているんですか?」
Kさん「利用者の役に立つ転職サイトを作る事が私の志だからなんです。」
私「志、ですか?どういうことなんでしょうか?」
Kさん「もう20年前の話になります。私は大学卒業後、ブラック企業に就職したんです。それですぐに辞めたんですが、次の会社に行ってもまたブラック企業で、その次もという具体に転職を繰り返してきたんです。そのせいで30も半ばになると派遣でしか雇ってくれなくなって、収入、生活はますます不安定なものになりました。結局、今、結婚していないのはそのためです。だから、これから転職する人には迷いのない選択をしてほしいと思うんです。」
私「なるほど、今まで結構苦労されてきたんですね。それが動機となって、今の転職サイト作りに繋がっているということですね。」
Kさん「はい、そうです。」
私「具体的に今はどんな転職サイトを作っているのでしょうか?」
Kさん「主に医療系求人の転職サイトを作っています。転職ライブラリープラスと言うサイトでその看護師転職サイトのカテゴリーを中心に作っています。実は私は転職を繰り返す中で、一時期治療家を目指したことがあります。様々な交流会でコ・メディカルの方々の知り合いができました。しかし、皆さんの話を聞いていると、人の健康に深く携わっておられるのに、労働条件や賃金的に恵まれず不健康な方が多いことに気づきました。もっといい環境の良いところがあるのになぁと。実はそれも独立の大きなきっかけの一つです。」
私「なるほど、転職して労働環境が良くなれば健康的になるということですね。」
Kさん「はい、そうです。そのお手伝いをできればいいなと思ったんです。」
私「なるほど。今は一日中転職サイト作りをされているのでしょうか?」
Kさん「はい。と言いたいところですが、まだ収益がほとんどない状況なので、別のサイトを作ることもあります。」
私「別のサイトとは何でしょう?」
Kさん「知人の紹介で簡単なWebサイトを作っています。中古車販売、クリニックなど業種は様々です。」
私「なるほど。転職サイトの完成はいつ頃になるのでしょうか?」
Kさん「実は完成することはないんです。サイトを訪問してくれる人にとって、最新の情報、役に立つ情報を載せていかないといけないので、常に更新し続けなければいけないんです。」
私「そういうことですか。よく分かります。サイトを作るのも大変ですね。」
Kさん「今は看護師さんを中心にインターネット上でアンケートを取ったり、知人のツテでインタビューしたりしています。お金と手間がかかりますけど、やはり利用される方の本音はサイトに載せないといけないので。」
私「私もどちらかというと中小の紹介業者だったんで、お金の問題はかなりリアリティーあります。ジャブジャブ広告費を使えるわけではないですからね。」
Kさん「そうなんですよ。ここの家賃も20万円で、決して安くありませんから。」
私「そうだったんですね。経費と広告収入のバランスは大切ですね。」
Kさん「はい。ただ本当に広告収入が増えたら、やりたいことがあるんです。」
私「ほう、それは何でしょうか?」
Kさん「私、少しでもお金が貯まると海外に行ってたんです。様々な国で、教育の機会に恵まれない子供たちの現状を見てきました。教育がなければやはり貧困に繋がるんです。そういった子供達にインタネット環境を整えてあげて、タブレットを配りたいんですね。」
私「タブレットですか?」
Kさん「はい。iPadみたいなモノで安いのだと1万円代でそこそこ良いのが買えます。今インターネットさえ繋がれば、無料で世界的に有名な大学の講義まで受けられるんです。実際にインターネットの授業だけで有名大学に合格した人もいるくらいです。」
私「そうなんですか。何か転職サイトを作れば儲かるかどうか、聞いた私がちょっと恥ずかしくなって来ました。」
Kさん「いいえ、お金がなければできないことなので。ただお金を私利私欲のために使うのではなく、社会のため、世界のために使いたいと思うんです。」
私「いえいえ、まさかそんな構想を持っていらっしゃったとは思いませんでした。」
Kさん「これが志です。もちろん、転職サイトには転職サイトの目的があり、そこで得た収入にはその収入の目的があるんです。」
私「転職サイト作り、ぜひ成功して欲しもらいたいですね。」
Kさん「ありがとうございます。頑張って良い転職サイトを作ります。」
私「今日は長い時間、ありがとうございました。」
Kさん「こちらこそ、わざわざ事務所まで来ていただいてありがとうございます。」
とまぁこんな感じで、私なんて志なんて考えてもみなかったなぁと思いつつ帰路につきました。
取材を終えて、考えたことがあります。
単純にお金を稼ぐ、それで自分が裕福になる、それも一つかも知れません。
しかし、自分だけでなく、家族や友人・知人、地域・組織・業界の人々、日本人、そして世界の人々の役に立つのなら、それはもっと良い世界の創造に繋がるのではないかと思うのです。