なぜB2Bのほうが儲かるの?
コンシューマー向け事業(B2C)で利益を出している会社もあるわけだが、
B2BとB2Cの違いは何だろうか。
ノートパソコンを例に考えてみたい。
諸兄がノートパソコンを買うとしたら、エロ動画しか見ないのでASUSの安いネットブックを買うかもしれないし、
スタバでどや顔をするためにMacBookAirを買うかもしれない。
このように個人でパソコンを買う際はいろいろな購買の動機があるが、基本今便利に使えているものがあれば買い替えしないことだろう。
一方、企業がパソコンを買う場合はもっと単純で、
それを買ったら
・もっと売り上げが増えるか、
・コストダウンできるか
どちらかの理由である。
企業は100万円分営業が売り上げを増やしてくれるなら10万のネットブックを買い与えても安いもんである。
もちろん、なるべく安く買うに越したことはないが価格.comを注視して最安値を狙ったりはしない。
そんなことをしているなら営業の仕事をしたほうが儲かるし、あまり安く買って不良品をつかんだら仕事に影響が出かねないからだ。
そんなわけで、同じような品質の商品がもっと安く売られていない限りは比較的高い値段で売れることになる。
コストダウンをするには? 人件費は給料の2〜3倍
コストダウンを考えたときに重要なのは人件費を減らす、または最大限に生かすことである。
なぜなら、人件費には給料の2〜3倍のコストがかかっているからだ。
例えばA君30歳独身年収450万円(手取り)について見てみよう。
婚活パーティーで年収450万円と言ったら女性がテーブルから離れていくかも知れない。
しかし、手取りが450ということは額面は税金が3割ぐらい引かれるので643万ぐらい、
さらに社会保障費の企業負担分(15%ぐらい)を国に納めなければならない。
また、交通費やオフィス費用、教育費や彼の世話をする人事総務の給料、健康診断代、退職金積み立てなど
もろもろ合わせると955万となる(計算は割と適当だがまあ大体こんなもん。大手企業ならもっと福利厚生が手厚い)。
さえないスペックの彼も企業からしたら約1千万プレイヤーというわけだ。
10%残業が減るならば去年買ったPCを捨てて、MacBookProの最新型を買い与えてもいい。
というわけでB2Bは、価格が下がりにくいため利益率が高く、買い替え以外の需要も見込めてお得なわけだ。
じゃあなんで最近メーカーは儲かってないの?
B2Bがお得というのも過去の話になりつつある。
企業がお金を出すのは儲けが増えるならという条件付きだ。
では企業の儲けは増えているのかというと一部の企業はもちろん増えている。
スマホ関連、インターネット関連の企業や東京オリンピック特需の建築業などである。
一方日本全体の平均としては伸びていない。経済成長率のグラフを見てみよう。

出展:世界経済のネタ帳
http://ecodb.net/exec/trans_country.php?type=WEO&d=NGDP_RPCH&c1=JP&c2=US&c3=CN&s=2000&e=2015
地をはう青の線が日本の経済成長率である。
ここ数年日本の経済成長率は2%もない。全体を平均してみると日本企業はそんなに成長していないということだ。
いや、2%でも今後を考えると実はすごいことだ。少子高齢化の日本では2050年には人口が半減するとも言われているから、
これから更に経済成長の見通しは厳しい。日本の経済は多くを内需に頼っているからだ。
(アジア進出とか移民受け入れだという人がいるのはこのため)
総論としては日本企業は成長していないし、今後も成長の見込みは厳しいので投資を控えているのだ。
ではコストダウンはどうか。
先述のように人件費がコストダウンできる主な部分である。
これまでに、アルバイトや工場労働者などのやることが決まっている人のコストはブラック企業と罵られるレベルで減らしてしまった。
一方で新しい企画を考える企画者だったり、技術者に関しては
生産性を客観的に見ることができないため、コストダウンが非常に難しい。
単純に性能の良いPCを買えば良いという問題ではなく、彼らをどうコミュニケーションさせて
知的なアウトプットを出させるのが良いかということが焦点になってきた。
また別の見方として、
1990年台から2000年台初頭にかけてはコンピューターの性能が大きく向上した時期であった。
ムーアの法則という言葉があり、これは2年で半導体の集積率が2倍になるという意味である。
(ざっくり適当に言えば、お値段据え置きでPCのいろいろな性能が倍々になっていた)
しかし、近年そこまでコンピューターの性能向上が見込めないため、
壊れるまで新しいコンピューターを買う必要もなくなってきた。
ソリューションとは
以上のようにB2Bでも待っていたら商品が売れて儲かるという状況ではなくなってきたため、
企業はソリューションという考え方を打ち出した。
ソリューションとは、「○○システムを導入して、××というやり方で業務を行えば、□□円コストが下がりますので、XX円の価格でもペイしますよ」という提案を企業に対して行う商売の方法である。
例えば、「我社のPCとX社のセキュリティ環境をセットで導入すれば、情報漏えい対策費が10億円浮くので、
(少々高い)PCを一括導入しても十分ペイしますよ」という具合である。
多くのメーカーは自社の子会社としてSI(System Integration いわゆるSE)会社を保有しており、
顧客企業のシステムとの統合の部分でもお金を儲けるビジネスモデルになっている。
しかし、ソリューションもそれほどうまく行っていない。
ソリューションの種になる技術を考えるのはこれまでハードウェアを作ってきた技術者たちだったりする。
彼らは経営の知識があるわけではないので、何を提案すれば経営者に響くのか分からずに作っている。
また、ソリューションを売る営業はこれまで箱売りしかして来なかった人たちだったりする。
ITの知識や提案の技術を持たない営業にはソリューションは売れない、または無理な価格や納期で売ってしまったりする。
さらに、ソリューションを買う顧客側も多くの場合そんなにITの知識が無かったり、
自分たちの業務の改善に本気で取り組んでいなかったりする。このため、頑なに何も買わなかったり、逆に営業の口車に乗って役に立たないシステムを買ってしまい自社の社員の業績を余計に落としてしまう。
特に企業の上層部は1990年台にいろいろなものが成長する世界で成果を出してきた人たちである。
彼らは今でもその感覚でいるので、現在の環境についてこれていないわけだ。
まとめると
今回はメーカーを取り巻く世の中全体の動きについて説明してみた。
正直説明臭くなってつまらない感じになってしまったかもしれない。
3行でまとめると
・日本経済が成長していないのでB2Bもそんなに儲からなくなってきた
・企業はこれまでの成功体験が仇になってソリューションをうまく作れない/売れない
・婚活するときは手取りじゃなくて額面でアピールせよ
ということでした。
ありがとうございました。
次回はもう少し社員に焦点を当てて書いていきたい。
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